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冬の家庭に潜む危険 「ヒートショック」から身を守る方法(後編)

寒い季節、温かいお風呂は至福のひとときですが、そこには「ヒートショック」という大きな危険が潜んでいます。ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が乱高下し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす健康被害のことです。特に、ご高齢の方や持病をお持ちの方はリスクが高まるため、正しい知識と予防策が重要になります。このコラムでは、安心して冬のお風呂を楽しむための具体的な対策をご紹介します。

特に注意が必要な方:ヒートショックのリスクが高い持病

以下のような持病をお持ちの方は、血管への負担が大きくなりやすく、ヒートショックのリスクが特に高まります。

  • 高血圧
    動脈硬化が進行していることが多く、温度差による血圧の急激な変動が心筋梗塞や脳卒中を誘発しやすくなります。
  • 糖尿病・脂質異常症
    動脈硬化の進行により血管の機能が低下しているため、血圧の変動が大きな負担となり、心筋梗塞などのリスクが高まります。
  • 心疾患(心筋梗塞、狭心症、不整脈など)や脳血管疾患
    血圧の急変動が発作や症状の再発を誘発する危険性があります。

これらの疾患をお持ちの方は、日頃の健康管理とともに、入浴時の注意を徹底することが命を守ることに繋がります。

今日から実践!おすすめの6つの安全な入浴法

ヒートショックを防ぐためには、入浴前後の環境と行動に少し気を配ることが大切です。ここでは、気を付けて頂きたい6つの注意ポイントを解説します。

  1. 脱衣所と浴室の温度差をなくす
    寒い脱衣所から暖かい浴室へ移動する際の温度差が、血圧を急上昇させます。脱衣所や浴室は、暖房器具などを使って20℃以上に保ち、温度差を小さくすることが最も重要です。窓の断熱対策なども効果的です。
  2. お湯の温度は41℃以下、入浴は10分以内に

    42℃以上の熱いお湯や長時間の入浴は、血圧を急激に低下させ、意識障害や熱中症を引き起こす原因となります。お湯の温度は41℃以下、浴槽に浸かる時間は10分以内を目安にしましょう。
  3. 入浴前のかけ湯と水分補給を忘れずに
    浴槽に入る前に、手足の先から体の中心に向かってシャワーやかけ湯を行い、体をお湯の温度に慣らしましょう。また、入浴中は汗をかくため、脱水を防ぐために入浴の前後でコップ1杯程度の水分補給を心がけてください。
  4. 食後すぐ・飲酒後の入浴は避ける
    食後は消化のために血液が胃腸に集まり、血圧が下がりやすくなっています。また、飲酒は血管を拡張させ血圧を低下させます。これらの状態での入浴は、血圧の急変動を招き、失神などの事故に繋がりやすいため、絶対に避けましょう。
  5. 浴槽からはゆっくり立ち上がる
    お湯に浸かっている間は水圧で血管が圧迫されていますが、急に立ち上がるとその圧力がなくなり、脳への血流が急減して「立ちくらみ」を起こしやすくなります。浴槽から出る際は、手すりなどを使って体を支えながら、ゆっくりと動作することを徹底してください。
  6. 一人での入浴を避け、家族に一声かける
    万が一、入浴中に体調が悪くなった場合に備え、一人での入浴はできるだけ避けましょう。同居するご家族がいる場合は「今からお風呂に入るね」と一声かけるだけでも、異変の早期発見に繋がります。連絡手段を確保しておくことも大切です。

 

まとめ

ヒートショックは、少しの工夫と心がけで予防できるものです。
特に持病をお持ちの方は、今回ご紹介した6つのポイントを日々の習慣に取り入れ、安全で快適なバスタイムをお過ごしください。ご自身の体調や入浴方法について不安な点があれば、かかりつけの医師や薬局の薬剤師にお気軽にご相談ください。

 

参考

本コラムは、以下の公的機関が発表している情報・ガイドラインを参考に、薬剤師としての経験・知見を交えて作成されています。

  • 独立行政法人国立長寿医療研究センター「健康長寿ネット」高齢者の入浴事故とヒートショック対策(2022年)
  • 厚生労働省・消費者庁「冬期に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(2016年)
  • 東京都健康長寿医療センター「STOP!ヒートショック」プロジェクト