前回のコラムでは、朝日を浴びることで「体内時計」のリセットができるとお伝えしました。
今回は、3つの習慣の2つ目、「呼吸を整える」ことについて深掘りします。

実は、呼吸は私たちが自分の意志で「自律神経に直接アクセスできる唯一の方法」なのです。

なぜ呼吸だけが「特別」なのか?

通常、自律神経はその名の通り「自律」して動いており、私たちの意志ではコントロールできません。

  • 心臓の鼓動(心拍数)を今すぐ半分にする
  • 血圧を少しだけ下げる
  • 胃腸の動きを止める

これらを意識だけで行うのは不可能です。

しかし、「呼吸」だけは例外です。

この「無意識と意識の境界線」にある呼吸こそが、自律神経を整えるためのスイッチとなります。

自律神経は、
息を吸うときは交感神経が優位に働き、
息を吐くときは副交感神経が優位に働きます。

したがって、副交感神経を優位にするには「ゆっくり吐く」ことで副交感神経を長く刺激することがポイントになります。

呼吸法は世の中にいろいろありますが、今回は私のお勧めの2つの呼吸法をお伝えします。
これらは私もほぼ毎日実践しています。

① 4-7-8呼吸法

アメリカのアリゾナ大学、アンドルー・ワイル統合医療センターの所長を務める医師アンドルー・ワイル博士が提唱した呼吸法です。恐らく世界で最も有名で、最も多くの人に実践されている呼吸法の一つ、と言われています。

 呼吸方法は、

    • 鼻から4秒吸って、
    • 7秒間息を止め、
    • 口から8秒かけて吐く

 これを繰り返します。

(画像:VIETNAM.VN)

 この吸うとき・吐くときに腹式呼吸を行い、おなかを大きく膨らませ、大きくへこませることで、横隔膜をしっかり動かして自律神経に刺激を与えます。

 ちなみに、吐くときにできるだけゆっくり、細く、長く吐くようにすると、ヨガ的な呼吸になってきます。私の場合、11呼吸くらいまで長くなります。初めは無理せずに、楽なペースでやってみて下さいね。

② Haの呼吸

ハワイには古い哲学としてフナ(Huna)という教えがあります。

そのHunaで教えられている、リラックスと浄化作用を重視した「Haの呼吸」というものがあります。

    • 鼻から2秒吸って、
    • 口から8秒かけて吐く
      • 吸うと吐くは1対2の比率にします

 

効果的に行うポイントは

  1. 「ハ」の音:
    吐くときに口を軽く開け、喉の奥から温かい息を出すように「ハ(Ha)」と音を出すのが特徴です。これは自分の中の古い記憶やストレスを放出し、空間を「空(くう)」にする意味があります。
  2. 舌の位置:
    呼吸中、舌の先を上の前歯の裏(歯茎)に軽く触れさせておくと、エネルギーの回路が閉じ、循環しやすくなると言われています。
  3. 姿勢:
    椅子に深く座り、背筋を伸ばして足の裏をしっかり床につけるのが理想的です。

そのほかの呼吸

他にも、4秒吸って4秒止めて、4秒吐いて4秒止める、などいろいろな方法があります。

息の吐き方も、「フーッ」と口すぼめて吐くのか、「ハーッ」と窓ガラスを曇らせるように吐くか、などいろいろな方法がありますが、概ね共通しているのは、吸うよりも吐く方に時間をかけている点です。

これは、副交感神経をより優位に使う狙いがあるようです。

ヨガなどでは、出来るだけ長く吐く、というやり方もあるので、いずれも副交感神経の働きを高めることが狙いなのでしょう。

実感としては、2年目くらいから呼吸法を行うと眠気を誘うようになりました。
3年以上継続している今では、呼吸法をするのとしないのとでは、明らかに神経が整うのが分かってきました。心を落ち着かせ、適度な集中状態を維持するにも効果を実感しています。

(あくまでも個人の感想です!)

鍵を握るのは「迷走神経」

呼吸が自律神経に影響を与える最大の理由は、「迷走神経(めいそうしんけい)」の存在です。

迷走神経は、副交感神経(リラックスの神経)の中枢であり、脳から心臓、肺、消化器へと広く張り巡らされています。深い呼吸を行うと、以下のようなメカニズムが体の中で動き出します。

  1. 深い呼吸(腹式呼吸)を行う
  2. 胸とお腹の境目にある「横隔膜」が大きく上下する
  3. その動きが物理的に迷走神経を刺激する
  4. 脳に「リラックスして良い」という信号が送られ、副交感神経が優位になる

結果として、心拍数が落ち着き、血圧が安定し、体は自然と休息モードへと切り替わります。

「横隔膜」を動かす腹式呼吸のすすめ

ヒトの胴体部は、肋骨に囲まれた「胸腔」と、胃腸などがある「腹腔」に分かれています。

その胸腔と腹腔に間にある膜が「横隔膜」です。
自律神経を整えるために重要なのは、この横隔膜をしっかり動かすことです。横隔膜をしっかり動かすには、胸だけで浅く吸う「胸式呼吸」ではなく、お腹を膨らませる「腹式呼吸」が必要です。

横隔膜は迷走神経とつながっており、横隔膜をしっかり動かすことで、迷走神経への刺激が活発になります。

腹式呼吸で横隔膜を動かす時は、息を吸う時におなかを膨らませるだけでなく、息を吐く時にできるだけおなかをヘコませることを意識してみて下さい。

腹筋が働いておなか回りの引き締め効果が期待できるだけでなく、排便時に腹圧をかける訓練にもなりますので、一石三鳥です。

いつでもどこでも「持ち歩ける健康法」

呼吸法の最大のメリットは、道具も場所も必要なく、「今すぐ、いつでも、どこでもできる」ことです。

  • 通勤・帰宅時の歩行中に: 歩調に合わせてゆっくり吐く
  • 仕事の合間に: 1分だけ目を閉じて深く吸い込む
  • 家事の合間に: 横隔膜の動きを意識してみる

たったこれだけで、あなたの体は「Life Tune(リズムの調整)」を始めます。
特別なサプリメントに頼る前に、まずは自分の呼吸という「天然のリラックス薬」を活用してみませんか。

Life Tune」:日常の微調整が未来を作る

私たちは、健康のために何か特別な、難しいことをしなければならないと考えがちです。
しかし、本来の健康とは、朝日を浴び、呼吸を整え、質の良い睡眠をとるという、生活のリズムそのものの中にあります。

腹式呼吸は、いつでも、どこでも実践可能な、最強の「Life Tune」メソッドと言えるでしょう。

次回は、シリーズの締めくくりとして、現代人が最も影響を受けている「睡眠と光(ブルーライト)」の関係について解説します。

【次回予告】 最終回:睡眠の質は「光」で決まる~ブルーライトとメラトニンの真実~

スマホの光がなぜ、私たちの眠りを妨げ、自律神経を乱すのか。その医学的な背景と、今日からできる対策をお伝えします。

>第2回:朝の光は「心身のスイッチ」〜体内時計をリセットする科学〜はこちら