朝晩の冷え込みが強くなるこの時期は、風邪と見分けがつきにくいインフルエンザや新型コロナウイルス感染症が流行し始める季節でもあります。「ただの風邪か、インフルエンザかコロナか分からない」「予防接種はいつ受けるべき?」「薬局で売っている検査キットは今どうなっているの?」
――今回は、それぞれの違いから、予防接種の効果、具体的な予防法、検査キットの現状、市販薬・漢方薬の選び方まで、薬剤師の視点でまとめてご紹介します。

インフルエンザ・風邪・新型コロナウイルス感染症、何が違う?
3つはいずれもウイルスによる呼吸器感染症で、発熱・咳・のどの痛み・倦怠感など症状が重なるため、症状だけで見分けるのは簡単ではありません。それぞれの傾向は次のとおりです。
- 風邪:発熱は37~38℃程度にとどまることが多く、のどの痛みや鼻水など局所症状が中心で、重症化はまれです。
- インフルエンザ:1~3日程度の潜伏期間を経て、38℃以上の高熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・強い倦怠感が急激に現れます。子どもの急性脳症や高齢者の肺炎など、重い合併症につながることがあります。
- 新型コロナウイルス感染症:現在は季節性インフルエンザなどと合わせて「急性呼吸器感染症対策」として位置づけられています。のどの強い痛みが目立つ、比較的緩やかに症状が現れるといった傾向が報告される一方、高齢者や免疫の働きが低下している方では重症化リスクが高く、症状が長く続く「罹患後症状(いわゆる後遺症)」が起こることもあります。
見た目の症状だけで自己判断せず、心配なときは医療機関の受診や検査キットの活用をおすすめします。
予防接種をすれば感染しない? 予防接種で期待できること・できないこと
インフルエンザ・コロナのワクチンは、いずれも感染そのものを完全に防ぐものではありません。
まずはそのことを大前提として理解しておく必要があります。では、なぜ予防接種をするのでしょうか?
それは、発症を防ぐだけでなく、重症化を抑え命の危険を少なくすることを目的としています。
インフルエンザワクチンは、6歳未満の小児で発病を約60%抑える効果が、65歳以上の高齢者施設入所者では34~55%の発病阻止・82%の死亡阻止効果が報告されています。
コロナワクチンについても、直近シーズンの株対応ワクチンで入院を約45~70%程度予防したとの報告があります。
日本では例年12月~3月にインフルエンザ流行のピークを迎えることが多いため、効果が現れるまでの期間を考えると、12月中旬までに接種を済ませておくことが望ましいとされています(今年はインフルエンザの流行が例年より早くなっているようですので、医療機関に予防接種可能な時期を早めにご確認下さい)。
なお、65歳以上の方はコロナワクチンも例年秋(10月ごろ)から定期接種の対象となっており、インフルエンザと合わせて接種時期を検討される方が増えていますので、気になる方は医療機関へご相談下さい。

高齢者、お子さま、基礎疾患がある方が特に注意したいこと
高齢者・基礎疾患のある方・妊娠中の方・免疫の働きが低下している方は、インフルエンザ・コロナいずれについても肺炎など重症化のリスクが高いグループです。
流行期にはできるだけ人混みや繁華街への外出を控え、体調の変化には早めに気づけるよう注意しましょう。お子さまについても、急性脳症などの重い合併症の可能性があるため、ぐったりしている・呼びかけに反応が鈍いといった様子があれば速やかな受診が必要です。
今日からできる具体的な予防方法
正直に言って、特別な対策はありません。
コロナが流行した時期に言われた、基本的な対策・行動の積み重ねが感染予防につながります。
- 手洗い:外出先から戻ったときや咳・くしゃみを手で覆ったときは、流水と石けんで丁寧に洗いましょう。アルコール濃度80%前後の手指消毒剤も効果的です。
- うがい:やはり外出後や人込みに言った後は、口の中や喉をうがいできれいにすることがお勧めです。
- マスクの使用:人込みでは、マスクを着用することがやはり効果的です。飛沫を直接吸い込むことを軽減できるので、感染予防には基本的な対策となります。
- 咳エチケット:咳やくしゃみが出るときは、不織布マスクやティッシュで口と鼻を覆いましょう。
- 換気:季節を問わず、こまめな換気が推奨されています。冬場は室温の低下に注意しながら、常時換気設備の活用や短時間の窓開けを取り入れましょう。
- 湿度管理:室内の湿度を50~60%程度に保つことも効果的とされています。
- 休養・栄養:十分な睡眠とバランスの良い食事で、体の抵抗力を保ちましょう。
- 人混みを避ける:流行期は、高齢者・基礎疾患のある方を中心に、人混みへの外出を控えることも有効です。
コロナが流行っていたころは、感染対策を誰もが徹底していました。
その時期は、風邪もインフルエンザもほぼ皆無と言ってよいくらい、発生することがありませんでした。こういった基本的な感染対策が、地味ですが、結局のところ最も効果的なのでしょう。

「もしかして…?」検査キットの今
薬局やドラッグストアでは、医療機関を受診しなくても購入できる検査キットが販売されています。
検査キットには「医療用」と「研究用」があります。
厚生労働省が承認しているものは「医療用」として販売されています。検査キットの精度にはバラツキがあります。厚生労働省が承認しているものは、性能が保証されているものであり、承認されていない「研究用」として販売されているものは、精度が保証されていません。
インターネット上では「研究用」のキットも販売されていますので、購入の際は「医療用」を購入するようにしてください。「医療用」検査キットのパッケージには、「体外診断用医薬品」または「第1類医薬品(一般用高原検査キット)」と表示されていますので、間違わないように気をつけましょう。
令和7年2月時点では、国が承認した一般用の抗原検査キットは約20品目以上にのぼり、そのうちコロナとインフルエンザA・B型を1回の鼻ぬぐい液検査で同時に調べられる製品は複数あります。これら「医療用」はいずれも「第1類医薬品」に分類され、薬局で薬剤師から説明を受けたうえで購入する仕組みになっています。凜調剤薬局でも取り扱っていますので、お気軽にご相談下さい。
検査キットの使用に当たっては、そのタイミングにも注意が必要です。
発症からあまり時間が経っていない段階は、鼻の中のウイルス量がまだ少なく、実際は感染していても検査結果が陰性になる「偽陰性」が起こりやすいことが分かっています。検査のタイミングとしては、目安として発症から半日~1日程度経過してから検査すると、より正確な結果が得られやすいとされています。また、無症状の方への使用は推奨されていません。
検査キットはあくまで自己判断の補助であり、陰性であっても症状が続く場合や判定に迷う場合は、医療機関の受診をおすすめします。購入の際は、使い方や注意点についてご説明しておりますので、薬剤師にお気軽にご相談ください。
発熱したときの薬の選び方―市販薬と漢方薬
市販の解熱鎮痛薬について
発熱はウイルスと戦うための体の防御反応でもあるため、必ずしも解熱させる必要がない、というのが基本的な考え方です。
ただし、40℃を超えるような高熱が続く状態では、体力を消耗してかえって抵抗力が落ちるため、早めの対応が必要です。
また、重症度を判断するには体温だけでなく、呼吸状態・意識レベル(ボーっとする)・脱水などの全身状態で判断する必要がありますので、我慢せず医療機関に相談することが大切です。
成分選びにも注意が必要です。
インフルエンザにまれに合併する「インフルエンザ脳症」は、ウイルスが脳内で増えることが原因ではなく、感染をきっかけに体内で過剰な炎症性サイトカインが放出される「サイトカインストーム」や、血管の内側の細胞が障害されることが主な病態と考えられています。
一部の解熱鎮痛成分(アスピリン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸など)は、脳症を発症した際の経過を悪化させる可能性が統計的に指摘されており、私たち専門家の間ではこれらの使用を避け、アセトアミノフェンを選ぶことが推奨されています。
なお、これらの成分とインフルエンザ脳症の直接的な因果関係は完全には証明されておらず、あくまで関連が疑われる段階ですが、安全性を優先した薬剤選択が広く行われています。抗インフルエンザ薬を服用したかどうかにかかわらず、インフルエンザに罹患した際は誰にでも異常行動が現れる可能性があるとされているため、発熱から少なくとも2日間程度は、お子さまや若い方(10代の方)を一人にしない、玄関や窓の施錠を確認するといった見守りも大切です。
市販薬を選ぶ際は、含まれる成分をよく確認し、迷ったときはお気軽にご相談ください。常用薬がある方や妊娠中・授乳中の方も同様です。

漢方薬(麻黄湯など)という選択肢
インフルエンザの初期には、漢方薬の麻黄湯が選択肢のひとつになることがあります。
悪寒が強く汗をかいていない発症早期の使用が想定されており、臨床研究ではウイルス量が減少したとの報告や、抗インフルエンザ薬と併用することで解熱までの時間がやや短縮したとの報告があります。ただし、麻黄湯は一つの選択肢であり、「漢方薬を飲んでいるから受診や検査は不要」ということにはなりません。
「漢方薬ならば副作用がないから安全」と思っている方もいらっしゃいますが、漢方薬も薬ですので、副作用がないわけではありません。麻黄湯で注意する点は、気管支を広げる成分(エフェドリン)が含まれるため、心臓病や高血圧のある方、高齢の方は動悸や血圧上昇に注意が必要です。
また、甘草(かんぞう)を含むため、他の漢方薬と併用したり長期間続けたりすると、むくみや血圧上昇(偽アルドステロン症)を起こすことがまれにあります。解熱鎮痛薬との併用については、症状や体質によって考え方が異なるため、自己判断で組み合わせず、薬剤師や医師にご相談のうえでご使用ください。
こんな症状が出たら早めに受診を
高熱が続く、呼吸が苦しい、意識がはっきりしない、ぐったりして反応が鈍い、けいれんがあるといった場合は、速やかに医療機関を受診してください。
高齢者や基礎疾患のある方は、症状が比較的軽く見えても急に悪化することがあるため、普段と様子が違うと感じたら早めの受診を心がけましょう。
予防接種の予約・お問い合わせ先
予防接種は、希望する医療機関へ直接ご予約のうえ受けていただく形が一般的です。
ワクチン接種においては65歳以上の方などを対象として、行政が助成を行っている場合があります。対象年齢や自己負担額、実施期間は年度によって変わるため、お住まいの自治体窓口で最新情報をご確認ください。
- 苅田町:保険健康課(093-588-1235)
- 行橋市:地域福祉課 健康づくり推進係(0930-25-1111 内線1215~1217)
- みやこ町:子育て・健康支援課(0930-32-2725)
- 北九州市:保健所保健企画課(093-522-8711/北九州市コールセンター 093-582-4894)
予防接種を受ける際には、医療機関に行く際に必ずお薬手帳もご持参ください。
まとめ
インフルエンザ・風邪・コロナは症状が似ていても、経過や重症化のリスクが異なります。
予防接種や日々の手洗い・換気・湿度管理といった基本的な対策を積み重ねながら、「かかったかも」と思ったときは検査キットも選択肢のひとつとして活用し、正しいタイミングでの使用と、迷ったときの受診・ご相談を心がけましょう。市販薬や漢方薬を選ぶ際も、ご自身やご家族の状況に合わせて、ぜひ私たち凜調剤薬局にご相談いただければと思います。
参考資料・出典
- 令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A|厚生労働省
- インフルエンザワクチン(季節性)|厚生労働省
- インフルエンザ|国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト
- インフルエンザ対策のポイント|東京都感染症情報センター
- 抗インフルエンザウイルス薬服用後の異常行動について|厚生労働省
- インフルエンザ脳症の新しい治療法について(IASR)|国立健康危機管理研究機構
- インフルエンザ脳症とNSAIDsの関連性は?|公益社団法人 福岡県薬剤師会
- インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について|日本小児科学会
- 新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報|厚生労働省
- 薬局、インターネット等で抗原定性検査キットを購入する方へ|東京都保健医療局
- 苅田町・行橋市・みやこ町・北九州市 各自治体公式サイト(予防接種担当窓口)

