朝晩が涼しくなってくると、「肌がカサカサする」「粉をふいたようになる」「かゆくて眠れない」といったお悩みが増えてきます。

実はこれ、単なる乾燥だけでなく、皮膚の炎症(湿疹)に進んでしまっているケースも少なくありません。

今回は、秋に肌が乾燥しやすくなる理由から、乾燥肌と皮膚炎の違い、保湿剤の成分ごとの特徴と選び方、正しい塗り方、暖房や衣類など生活面での工夫、そしてステロイドとの付き合い方まで、薬剤師の視点でご紹介します。

秋から肌が乾燥しやすくなる理由

夏から秋にかけて気温と湿度が下がると、皮膚の表面(角質層)に含まれる水分が失われやすくなります。

あわせて気温の低下により皮脂の分泌量も減るため、肌の表面を覆う「皮脂膜」が薄くなり、角質層の水分を保つバリア機能そのものが低下してしまいます。

特に40代以降の方、乳幼児、冷暖房の効いた環境で過ごす時間が長い方、運動習慣が少ない方は乾燥の影響を受けやすいとされています。乾燥が進むと皮膚表面が粉をふいたようになり、就寝時に体が温まることで、かゆみを感じやすくなることも知られています。

乾燥肌と湿疹・皮膚炎の違い

「乾燥肌(乾皮症)」は、水分や皮脂が不足してカサつきやかゆみが出ている状態で、基本的には炎症は伴っていません。しかし乾燥が進むと角質表面に細かいひび割れが生じ、そこから刺激やアレルゲンが入り込んで赤み・かゆみを伴う炎症、いわゆる「皮脂欠乏性湿疹」に進んでしまうことがあります。

皮脂欠乏性湿疹は、すねや腰まわり、背中など皮脂の少ない部位に起こりやすく、進行すると貨幣状の湿疹に広がることもあります。
ここまで進んでしまうと保湿だけでは改善しにくく、炎症を抑える塗り薬が必要になる場合もあるため、症状の見極めと早期の対策が大切です。

保湿剤の成分と特徴

保湿剤には、成分によって役割の違いがあります。

  • 白色ワセリン:皮膚の表面に油の膜を作り、水分の蒸発を防ぐ「フタをするタイプ」の保湿剤です。保湿力そのものはやや控えめですが、刺激が少なく安全性が高いため、傷やひび割れがある部位、赤ちゃんの肌にも使いやすいのが特徴です。ベタつきが気になる方もいます。
  • ヘパリン類似物質:水になじみやすく、角質層に水分を引き込んで保持する働きがあります。保湿効果が高く、血行を促す作用もあわせ持つため医療機関でも広く処方されていますが、まれに赤みなどの刺激が出ることがあります。
  • 尿素製剤:硬くなった角質を柔らかくしながら水分を保持する働きがあり、かかとやひじなど角質が厚くなった部位に向いています。一方で、ひび割れや傷、炎症のある部位、粘膜には使用できず、皮膚が敏感な方では「ぴりぴり感」などの刺激が出ることがあるため注意が必要です。

顔・体・手など部位別の選び方

保湿剤は「どの成分か」だけでなく、「どの部位に使うか」で選び方が変わります。

顔やまぶたは特に刺激を感じやすいため、尿素製剤は避け、ヘパリン類似物質やワセリンなど低刺激なものを選ぶ必要があります。目に入らないよう細心の注意が必要ですので、目の周りの症状については、基本的に皮膚科医へのご相談をお勧めします。

かかとやひじ・ひざなど角質が厚くなりやすい部位には、角質を柔らかくする尿素製剤が向いています。

手は水仕事や消毒用アルコールの使用で乾燥しやすいため、こまめに塗り直せるものを選びましょう。

ひび割れや傷がある部位には、尿素製剤は避け、刺激の少ないワセリンなどを優先してください。迷ったときは、薬局で症状や使用部位を伝えてご相談いただくのが確実です。

保湿剤を塗るタイミングと使用量

保湿剤は、入浴後肌の水分が残っているうちに塗ると効果的です。

ですので、完全に水分をふき取ってしまうのではなく、少し水分を残して、水分も巻き込むようなつもりで塗布して頂くことがおススメです。

1日1~2回、続けて使うことが大切です。
塗る量の目安として、「フィンガーチップユニット(FTU)」という考え方があります。
大人の人差し指の先から第一関節までチューブから押し出した量(約0.5g)が、大人の手のひら2枚分の面積に塗る目安とされています。

1FTU(フィンガーチップユニット)人差し指の先端から第一関節までローションの目安 1円玉約0.5g

 

ただしチューブの太さや軟膏・クリームなどの剤形によって差があるため、量にこだわりすぎず「しっかり塗れているか」を意識し、迷ったときは薬剤師や医師に確認するとよいでしょう。

経験的には、塗布する量が少ない方が多いように感じますので、挿絵も参考に、しっかりと十分量を塗布することをお勧めします。

1FTUで濡れる範囲 成人の手のひら約2枚分成人の部位別使用量の目安

暖房の使い方と今日からできる生活習慣

保湿剤によるケアとあわせて、日々の過ごし方を見直すことも乾燥対策には欠かせません。

室内の湿度管理
暖房を使うと空気が乾燥しやすいため、加湿器などを使って室内の湿度を保ちましょう。暖房の温風が肌に直接長時間当たり続けないよう、吹き出し口や座る位置にも気を配ると安心です。ホットカーペットや床暖房、オイルヒーターなどを使用すると温風が出ないため、比較的乾燥の程度は軽くなってきます。床面から温めることは、ヒートショックなども念頭においた暖房効果としても、効果的と思われます。
入浴方法
熱いお湯に長時間つかると、必要な皮脂まで洗い流してしまいます。ぬるめのお湯で短時間にとどめ、洗浄力の強いボディソープの使いすぎや、ナイロンタオル・垢すりでのゴシゴシ洗いは避け、手で優しく洗うようにしましょう。入浴後は肌が乾く前に保湿剤を塗るのがポイントです。
電気毛布・乾布摩擦は控えめに
電気毛布は使いすぎると肌の乾燥を進めることがあり、乾布摩擦も皮膚への刺激になるため注意が必要です。
バランスの良い食事と水分摂取
栄養バランスの取れた食事を心がけ、水分もしっかりと摂取して、体の内側から水分をしっかり保つようにしてください。寒くなると喉の渇きを感じにくくなるため、水分摂取が減って、脱水傾向になるケースは少なくありません。脱水になれば、皮膚も水分不足で、より乾燥しやすくなります。こまめな水分摂取は、冬場でも大切なのです。
早めのケア
かゆみがひどくなり搔き破ってしまうと、治るまで人時間がかかります。そうなる前に、早めの保湿を心がけましょう。もし掻き壊してしまった場合は、皮膚科に受診するなど早めに手当てをしましょう。

肌に触れる衣類の素材にも注意が必要です。
日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも、発汗やウール素材の衣類が皮膚症状を悪化させる要因として挙げられています。

ウールなどの動物繊維やポリエステルなどの化学繊維は、繊維の硬さや静電気により肌への刺激になりやすいため、乾燥やかゆみが気になる時期は、肌に直接触れる下着やインナーには刺激の少ない綿100%の製品を選ぶとよいでしょう。

市販のステロイド外用薬を安易に使わないために

かゆみや赤みがあると、市販のステロイド外用薬で早く済ませたくなるかもしれません。

しかし、自己判断での長期使用や中止は避けるべきとされています。
自己判断で治療を中止すると、かえって治療前より悪化することがあり、症状が落ち着いてきた段階でも、医師の指示のもとで保湿を主体にしながら少しずつ塗る頻度を減らしていくなど、段階的な対応が必要となります。

日本皮膚科学会のガイドラインでも、症状の重症度に応じて適切な強さの薬剤を選ぶことの重要性が示されており、ステロイドの副作用と、もともとの皮膚症状の悪化を混同しないよう、専門家の説明を受けることの大切さが指摘されています。

同じ場所に何週間も市販のステロイド外用薬を使い続けている、症状が広がっている、効果を感じにくくなってきた――このような場合は、自己判断で使用を続けず、皮膚科を受診しましょう。当薬局でも、市販薬をお選びする際には、症状の期間や範囲を伺ったうえで、受診をおすすめする場合があります。

皮膚科を受診した方がよい状態

保湿を続けてもなかなか症状が改善しない場合や、症状が悪化しているなと思う場合は、皮膚科の受診をおすすめします。

 

かゆみが強くて眠れない、掻き壊してジュクジュクしたり出血している、赤みや湿疹が広がっている、発熱や強い痛みを伴う(とびひなどの二次感染の可能性もあります)といった場合も、早めに皮膚科にご相談ください。

薬局でご相談いただけること

当薬局では、ワセリン・尿素・ヘパリン類似物質を含む市販の保湿剤や、市販のステロイド外用薬について、症状や使用部位に合わせたご相談を承っています。

「市販の保湿剤でおすすめはどれ?」「この症状は皮膚科に行った方がいい?」といったご質問も大歓迎です。苅田町にお住まいの方はもちろん、行橋市・みやこ町・北九州エリアからお越しの方も、乾燥肌のお悩みがあれば凜調剤薬局までお気軽にお声がけください。

まとめ

秋の肌トラブルの多くは、気温・湿度の低下による水分・皮脂の減少から始まります。

単なる乾燥のうちに保湿剤でケアし、暖房・入浴・衣類など生活面の工夫を重ねることが、皮脂欠乏性湿疹への進行を防ぐポイントです。市販のステロイド外用薬は自己判断で使い続けず、かゆみが強い・改善しないといったときは、我慢せず皮膚科や薬局にご相談ください。

参考資料・出典

  • アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021|公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本アレルギー学会
  • 皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)|千葉県皮膚科医会
  • 皮脂欠乏症|徳島県医師会
  • 保湿剤の使い分け(ヘパリン類似物質、尿素、白色ワセリン)|社会医療法人 甲友会
  • ケラチナミンコーワクリーム20% 添付文書|医薬品医療機器情報提供ホームページ(JAPIC/PMDA登録情報)
  • ステロイド外用薬の長期使用のやり方|九州大学病院皮膚科
  • 肌のために工夫できることは?|乾癬ネット