前編では、高齢者が暑さに気づきにくくなる理由や、就寝中のエアコンの使い方、風の当て方の工夫についてお伝えしました。
後編では「赤ちゃん・お子さまのためのエアコンの使い方」と「節約しながら安全に冷房を使うコツ」、そして多くの方が気になる「電気代」と「熱中症による医療費」の比較についてご紹介します。

4. 赤ちゃん・お子さまのためのエアコンの使い方
乳幼児は高齢者と同様に熱中症の「弱者」です。
体重に占める水分量の割合が65~70%と高く、体表面積も体重に対して大きいため外気温の影響を受けやすいうえ、発汗機能そのものがまだ未熟であることがその理由とされています。「エアコンは体に悪い」という考えから使用を控えるご家庭もありますが、適切に使用すれば害はなく、むしろ積極的な活用が推奨されています。
室温の目安
環境省の熱中症環境保健マニュアルが示す室温28℃という目安は子どもにも当てはまりますが、エアコンの設定温度と実際の室温は必ずしも一致しない点に注意が必要です。
日本生気象学会は、屋外と室内の温度差を5~7℃程度に抑えることを推奨する一方、室温を24℃未満に下げすぎないことも大切だとしています。
総合的に考えると、子どもの室温は25~28℃程度を目安にするとよいでしょう。

三菱電機「教えて!霧ヶ峰:『夜間熱中症』に注意!夏のエアコン使用時の快眠環境づくり」 より引用
「つけっぱなし」が基本
子どもは大人に比べて体温調節機能が未熟で体に熱がこもりやすく、熱中症のリスクが高いため、真夏日・猛暑日に室内で過ごす際はエアコンを常時つけておくことが推奨されています。就寝中にタイマーで切れる設定にすると、切れた直後に室温が急上昇して寝苦しさや夜間の目覚めにつながるため、就寝中もつけっぱなしが望ましいとされます。
保護者の方からよく聞かれるお悩みに「子どもにとって適切な温度かどうかわからない」というものがあります。
子どもは体温が高いため、大人が快適だと感じる設定温度より少し(目安として1~2℃)下げてあげるとよいでしょう。あわせて、夜の照明は暖色系で照度を落とし就寝中の常夜灯は消すこと、15時以降のお昼寝を避けることも、より良い睡眠環境につながります。
その他の工夫
- 冷風が直接ベビーベッドやベビーカーに当たらないよう、風向き・設置場所を工夫する
- 遮光カーテンで日射熱の侵入を抑え、室温上昇そのものを防ぐ
- 汗の量、機嫌、顔色、おしっこの色や回数など、言葉で訴えられない分、周囲が体調のサインを観察する

見逃さないで:室内熱中症は約4割
熱中症による救急搬送のおよそ4割は屋外ではなく「住居」で発生しているというデータがあります。
「家の中だから安全」ではなく、「家の中でも適切にエアコンを使うこと」が対策の基本です。
5. 上手に節約しながらエアコンを使うコツ
「エアコン=電気代がかかる」というイメージから使用を控える方も少なくありませんが、使い方を工夫することで、快適さや安全性を損なわずに電気代を抑えることができます。
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工夫 |
内容と節電効果の目安 |
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設定温度の調整 |
冷房時に設定温度を1℃上げると、消費電力を約13%削減できるとされる |
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フィルター清掃 |
2週間に1回程度の清掃で、目詰まりによる余分な電力消費を防ぐ(年間約990円の節約試算) |
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室外機まわりの管理 |
室外機に日陰を作り、吹き出し口の前に物を置かないことで熱交換効率を維持する |
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自動運転モードの活用 |
室温・湿度を検知して最適な運転を自動選択し、余計な消費電力を抑える |
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窓・開口部の断熱 |
夏場に室外から侵入する熱の約73%は窓などの開口部からとされ、遮熱カーテン等が有効 |
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扇風機・サーキュレーター併用 |
空気を循環させることで体感温度が下がり、設定温度を下げすぎずに済む |
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買い替え |
最新の省エネエアコンは10年前のモデルに比べ、消費電力を約15%程度削減できるとされる |
重要なのは、「電気代を節約するために冷房を我慢する」のではなく、「安全な範囲でできるだけ電気代を抑える」という発想です。

6. 「電気代の節約」と「熱中症による経済的損失」の比較
エアコンの使用を控える最大の動機は「電気代」であることが多いのではないでしょうか。
しかし、我慢した結果として熱中症になった場合にかかる医療費・社会的コストと比較すると、その経済合理性は大きく異なります。
エアコンを使い続けた場合の電気代の目安
一般的な家庭用エアコン(電力量目安31円/kWhで試算)を1日24時間つけ続けた場合の電気代は、機種や部屋の広さにもよりますがおおよそ720円程度、1か月間つけ続けた場合でも2万円前後が目安とされています。
就寝時間帯(8~10時間程度)のみ使用する場合はさらに抑えられ、月あたり数千円程度に収まるケースが一般的です。
熱中症で救急搬送・入院した場合にかかる費用の目安
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ケース |
費用の目安 |
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救急車の出動1回あたりのコスト(社会的費用) |
約4万5千円/回 |
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2日程度の入院(軽症~中等症) |
総医療費 約15万円前後/自己負担目安 4~9万円程度 |
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3日間の入院 |
自己負担 10万円以上になる場合がある |
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重症化し集中治療・長期入院となった場合 |
総医療費が100万円を超えるケースも珍しくない(自己負担目安 約30万円) |
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高齢者の熱中症による入院日数(調査平均) |
平均約27.5日との報告あり |
※上記の金額は複数の公開情報・保険会社等の試算をもとにした目安であり、実際の金額は症状の程度、医療機関、保険適用状況、居住地域の制度等により大きく異なります。正確な金額は医療機関・保険者にご確認ください。
東京大学と東京都監察医務院による分析では、屋内での死亡事例のうち16.4%は「エアコンを適切に使いこなせなかった」ことが死亡の一因と考えられると報告されています。
さらに屋内死亡例全体の44.9%はエアコンの電源がオフになっており、29.4%はそもそも部屋にエアコンが設置されていませんでした。研究グループは「屋内の熱中症はエアコンがあれば防げる。家族や近隣で支え合ってほしい」と呼びかけています。
薬局からの結論
エアコンを一夏(1か月)つけ続けた場合の電気代の目安 → 数千円~2万円程度
熱中症で2日入院した場合の自己負担の目安 → 4~9万円程度、重症化すれば数十万円~100万円超
節約できる電気代よりも、熱中症による自己負担・失われる時間・そして命のリスクの方が、はるかに大きな「損失」になり得ます。
「もったいない」から我慢するのではなく、「命と健康を守るための必要経費」としてエアコンの活用を積極的に検討してください。
7. 今日からできるチェックリスト
ご本人・ご家族へ
- ☑️居室に温湿度計を置き、体感ではなく数字で室温28℃・湿度を確認する
- ☑️就寝時はエアコンを「切る」のではなく、26~28℃設定で一晩中つけたままにする
- ☑️エアコンの風は直接当てず、自動風向き・サーキュレーターの併用で部屋全体を循環させる
- ☑️フィルターは2週間に1回を目安に掃除し、冷房効率を保つ
- ☑️こまめな水分・塩分補給を、のどの渇きを感じる前から心がける
- ☑️高齢のご家族・お子さまには、周囲が室温と体調をこまめに確認する
こんな症状があればすぐに医療機関へ
- めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り
- 頭痛、吐き気、体がだるい・力が入らない
- 呼びかけへの反応がおかしい、意識がはっきりしない(この場合は救急要請を)

本コラムは熱中症予防に関する公的機関・学術研究等の情報をもとに作成した一般的な健康情報であり、個別の診断・治療方針に代わるものではありません。持病がある方、服薬中の方、体調に不安のある方は、医師または薬剤師にご相談ください。
猛暑が続くこの夏、熱中症は危険レベルに達しています。
命に係わるものと受け止め、しっかり対策をしていきたいですね。何かわからないことがありましたら、気軽に凜調剤薬局までご相談ください。

