薬剤師が提案する「日傘」の戦略的活用

日差しが強まる季節、私たちの健康を守るために欠かせないのが紫外線対策です。

「日焼け止めは塗っているけれど、日傘までは……」という方も多いかもしれません。しかし医学的知見に基づけば、日傘は単なる「ファッション」の道具ではなく、皮膚がん・白内障・熱中症という具体的な健康被害を防ぐための「防護具だといえます。

紫外線対策は、健康寿命を守るための予防の一つです。
世界保健機関(WHO)によると、2020 年には世界で 150 万件以上の皮膚がんが診断され、12 万人以上が皮膚がん関連で亡くなったと報告されています。紫外線(UVR)は皮膚の DNA に直接ダメージを与え、免疫機能を低下させることが知られています

WHO は「UV インデックス(UV 指数)が 3 以上の時」は積極的な紫外線対策を推奨しています。
そこで見直したいのが日傘です。日傘は頭上からの紫外線を遮るだけでなく、身体への熱ストレスを緩和し、夏の熱中症リスクを下げる実用的なツールでもあります。

日傘がもたらす「低減効果」の検証

日傘をさして歩くことは、環境省のデータによれば「10 メートル間隔で並ぶ街路樹の木陰を歩く」のと同等の熱ストレス低減効果があるとされています。単に「涼しい」と感じるだけでなく、以下のような数値が報告されています。

熱ストレスの低減

上着を着用しないクールビズの状態に日傘を併用すると、熱ストレスを合計で約 20%低減できます(クールビズ単体では約 11%)。

発汗量の抑制

日射を 99%以上カットする日傘を使用した場合、帽子のみを着用している状態と比較して、汗の量が約 17%少なくなることが環境省の実験で確認されています。

体感温度の変化

埼玉県が紹介している研究では、日傘の使用によって頭部の体感温度が 49℃、全身の体感温度も 12℃低下することが確認されています。

これらのデータは、日傘が「暑さ」という身体的負荷を物理的に和らげ、熱中症という急性疾患のリスクを下げてくれることを示しています。

「失敗しない日傘選び」の 3 つの基準

①「一級遮光」を目印にする

日本洋傘振興協議会(JUPA)の自主基準では、JIS 規格試験に基づき遮光率 99%以上の生地を使用した商品を「遮光傘99.99%以上を「一級遮光傘と呼びます。タグや商品ラベルの表示を確認し、根拠のある遮光率・UV カット率が明記された商品を選びましょう。

②遮熱コーティングも確認する

「黒い傘だから安心」とは限りません。生地裏面の遮熱コーティングの有無によって、傘の下の温度上昇の抑えやすさが変わってきます。色だけでなく、遮熱・遮光に関する表示もあわせてチェックするのがおすすめです。

③「反射」という死角を意識する

日傘で頭上を守っても、紫外線は足元からも反射してきます。環境省の資料では、コンクリート・アスファルトで約 10砂浜で 1020新雪ではおよそ 80もの紫外線が反射するとされています。

日傘だけで紫外線を完全に防ぎきることはできない点に注意しましょう。

日傘で頭部を守っても防ぎきれないのが、「下からの反射」や「散乱光です。
これらから、人体で唯一、粘膜が露出している器官である「目」をどう守るか。次回のサングラス編で詳しく解説します。

参考資料

・世界保健機関(WHO)「Ultraviolet radiationFact sheet2022 6 月更新) https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/ultraviolet-radiation

・環境省「紫外線環境保健マニュアル 2020https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf

・環境省 報道発表資料「日傘の活用推進について~夏の熱ストレスに気をつけて!~」(2019 5 21 日)https://www.env.go.jp/press/106813.html

・埼玉県「『暑さ対策』としての日傘の普及啓発」https://www.pref.saitama.lg.jp/a0502/higasa/higasa.html

JARO(日本広告審査機構)「日傘の遮光表示に決まりはあるの?」https://www.jaro.or.jp/shiryou/topic/irui/025.html